歌舞伎十八番のひとつ「助六由縁江戸桜」の主人公・花川戸助六は、吉原では評判の喧嘩っぱやい伊達男です。助六が毎晩のように吉原で喧嘩を繰り返すのには、実は理由がありました。江戸の町人に身をやつした助六は、実は親の仇討ちを心に秘めた武士・曽我の五郎です。仇討ちに必要な家宝の友切丸(ともきりまる)を見つけ出そうと、相手に刀を抜かせるため、喧嘩を繰り返していたのです。吉原一番のおいらんであった揚巻(あげまき)にぞっこんの髯の意休がその刀を持っていることを突き止め、揚巻と助六は協力して家宝を奪い返し、いざ仇討ちへと向かうというのが話の筋です。
日本三大仇討ちで有名な「曽我兄弟の仇討ち」は鎌倉時代の富士山麓でのお話で、弟・五郎は、当時20歳前後の若さのまま、富士の裾野で命を落とす筈ですが、歌舞伎の世界では、江戸時代の吉原に出没するという設定。ちなみに行楽に欠かせない「助六寿司」は、助六の恋人・揚巻の「揚げ」を稲荷寿司、「巻き」を海苔巻きに見立て、「揚巻寿司」ではなく、あえて「助六寿司」とした江戸っ子の洒落っ気が効いたネーミングだそうです。