◆青木ケ原樹海に眠る「魔人穴」
(富士山の写真家・大山行男の写真集「富士」より)
ある日不思議な樹型溶岩を見つけた。地上には2つの大きな穴が開いていて深さ4〜5メートル、地下ではひとつのホールになっていた。縄バシゴを降ろしてさっそく入る。穴の底に着くと八畳くらいの広い空間があった。私はさっそく撮影にとりかかった。左の穴からは陶芸の釉薬がどろっと流れたような跡があり、もう一方の穴には苔が上から下までびっしりとついていた。私は2つの穴の真ん中に立ち、三脚を立てカメラを載せた.広角レンズに替え、2つの穴を捉えるにファインダーを覗いた時だった。2つの穴は人の目のようで地上から地下に向かって私を睨んでいるでもあった。それは魔人か八百万(やおよろず)の神がみとの遭遇に思え、夢中でシャッターを切った。穴には不思議なエネルギーが充満していて、私はこの穴を魔人穴と呼び、お気に入りの撮影場所にしている。