◆浅間神社は「あさま」か「せんげん」か?
静岡県の富士宮市にある駿河国一宮『富士山本宮浅間大社』は、全国1300社の浅間神社の総本宮で「富士山本宮センゲン大社」と呼ばれていますが、例外として山梨県笛吹市の甲斐一宮『浅間神社』は「アサマ神社」と呼ばれています。同じく山梨県には「河口湖浅間神社」(富士河口湖町)「一宮浅間神社」(市川大門町)の三か所が「アサマ神社」と呼ばれています。
浅間山は「あさま」と呼ぶのに、富士山の浅間神社はなぜ「せんげん」神社と言うのでしょうか? その疑問には、まず「あさま」の語源を調べてみることにしましょう。語源には色々な説がありますが、寺田寅彦博士の説が面白い。曰く:《「古語でアサマは火山を意味したのではないか」という。日本の火山の名称には「ア行音+サ行音(浅間、阿蘇、有珠、恐、恵山、雲仙、等)」という「音の類似」が多くある。》他には:《「アサマ」はアイヌ語で「火を吹く燃える岩」の意味から名付けられた。と言う説。》また南方説で:《マレー語では、「アサ」は煙を意味し「マ」は母を意味するので、その言葉を火山である富士山にあてたとする説。》などなどです。いずれも「浅間(アサマ)」は古来「火山」を意味したようです。それでは「アサマ」がどうして「センゲン」と呼ばれるのか? これは、“元来、浅間は「アサマ」読みだが江戸時代に「センゲン」と読みならわされたようです。「仙元」とも書いたようで、「浅間嶺」にある浅間神社も以前は「仙元神社」とか言われていたとのことです。「センゲン」と呼び始めたのは鎌倉から江戸時代にかけて、中国文化の影響が大きく、熟語をむやみに「音読み」にしたためと言われています。山や地名だけでなく、学者や芸術家などもこぞって名前は支那くさい名をつけたからでといいます。そう思うと「アサマ」でも「センゲン」でもなんとなく納得が出来ますが、読みはやはり「訓読み」で「アサマ」の方が私は好きです。